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2016/05/27

20inタイヤ 一斉テスト

トライアルにおける『タイヤの性能』を考える時に焦点が当たるのは「跳ね(反発)」と「グリップ」。でも、ハネ具合もグリップも空気圧によって大きく違ってくるし、同じ空気圧であっても使うフレームやライダーの体重、技量によって大きく変わってきます。
跳ねとグリップに加えて、ネバりとか安定感とか言い出すともうキリが無い…。結局タイヤの良し悪しっていうのは、ライダーさん一人一人の感性/感覚で選んでもらう他ありません。

「そんな事言われても…。どうやって選んで良いかわからない!」というライダーさんの為にインプレッションは行ってますが、1本1本使ってたんじゃあ、「他のタイヤと比べてどうよ?」っていうのはわかりません。
というわけで。タイヤの一斉テストを敢行しました。

テストライダーは3名。
選手代表で寺井一希。この日まではフロントタイヤにMONTY/リアタイヤにOBRという組み合わせで乗ってましたが、今後本格的に使うタイヤを決めるのも兼ねてテストに連行。
Spec:身長175cm/体重70Kg
普段のタイヤの空気圧:やや高め
テストを行ったバイク:CLEAN X1.1

サンデーライダー代表はGDRの斉藤・カルロス・直樹。最近は自分の20inのバイクを持ってないけど、小さな頃から乗りこんだ20inの扱いは抜群に上手い。
Spec:身長171cm(自称。実測169.4cm)/体重56Kg
普段のタイヤの空気圧:今20in持ってないけど中くらいが好き
テストを行ったバイク:ECHO 20 Ti Pro

おっさん代表はGDRの岩佐。あんまり乗って無い上に20inは苦手だけど、色々乗ってきた経験だけは長い。
Spec:身長174cm/82Kg
普段のタイヤの空気圧:やや低めで乗りたいけど体重がそれを許さない
テストを行ったバイク:MONTY 221 KAMEL

そんな三者三様の面子です。

テストは小雨がパラつく5月下旬。テストの開始から終了まで気温は一定だったので、気温や日照によるタイヤの特性の編かはほとんど無かったと思います。

まずはリアタイヤから。

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OBR - GEKOK
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カルロス(以下 カ):え、タイヤってどう表現したら良いんだろ。なんかこう、OBRは「ブワァン」と跳ねる感覚。力強い跳ねですね。

寺井 一希(以下 寺):反発良し!グリップも良し!ねじれにくい!文句無し!

岩佐(以下 岩):なぁ一希、気に入ってるのはわかるけど、もうちょっと言葉にしてみようか。

寺:他のタイヤと改めて比べると、やっぱりグリップ良いですね。

カ:サイドのグリップはちょっと甘いかなって思うけど、タイヤ全体が粘って全体として食いつきが良いって思いますよね。 「グリップが良い」って勘違いしちゃうと言うか。まぁ結局総体としてグリップは良いのかな。

寺:MONTYだと「あ、もうすぐ滑る」っていうのがわかりやすいけど、OBRだと「あれ、まだ頑張ってくれてるんだ」っていうとこあるよね。限界が高いから安心だなと改めて思う。
あと、やっぱり乗り比べてみると跳ねが良いです。大きく飛んだ時に着いてくる。

岩:横から見てると、一希が思いっきり飛ぶ時の跳ね具合はどのタイヤも大差ない様に見えるけどな。それでもOBRで乗ってるとシンクロ率がすごく高いのはよくわかる。
跳ねのの強さと言うか、勢いが強いかな。一希くらい跳べるライダーなら、タイヤは補助的な要素になるけど、オレ位の飛距離ならタイヤの跳ねはオマケではないので、このタイヤの強い跳ね具合は嬉しいね。ちょっと跳べる様になったライダーさんにとって「あ、跳ねる」っていう感覚がわかりやすいのもこのタイヤだと思う。
ただ、尖った岩の上とかの不整地でボヨンボヨン跳ねて止まりにくい。ちょっと神経使うね。

カ:あ、オレも飛んだ後の着地で暴れる感覚はあります。

寺:そうですか?あんまり感じないです。

岩:一希は空気圧高いから気にならんのかも知れん。ただ、空気圧が高い分プッシュしてから返ってくるまでの反応も速くなるし、OBRって空気圧高くすると、反動が返ってくるまでの「早さ」と、ボヨーンと跳ぶ「速さ」のギャップがある気がする。小さく跳ねる時と大きく跳ぶ時の感覚がけっこう違うと思う。
そういう扱いの難しさがあって、それをどうやって扱うかっていう、乗りこなす楽しさまで含めて一希は気に入ってるのかも知れんな。
(注!空気圧を高めにしなければ素直で扱いやすいタイヤです)

寺:そうかもしれないですね。



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MONTY - Pro Race
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カ:「パン!」と跳ねる。出だしが気持ちイイ。OBRはゴムっぽい感じで跳ねるけど、MONTYは空気っぽい感じで跳ねる。

岩:一希の言葉も時々よくわからんが、カルロスも宇宙語が多いな。 まぁ、でも言ってる事はわかる。加速が良い。

寺:軽いから伸ばしやすいですね。跳ね方もスムーズだなと思います。単純に使いやすい。
  着地の収まりも良いし、接地感がありますね。

カ:ブロックパターンのおかげかな?グリップは良いと思うし「あ、もうすぐ滑る」っていう感覚もわかりやすいですね。

寺:サイドのグリップは他と比べて良いよね。

岩:OBRの方が勝手にショルダーの部分が引っかかって、「お、ラッキー♪」みたいな時があるかも知れんけどな。コントロールするつもりで乗るならグリップに関しては一番素直。
跳ね方も一番素直なんで、「タイヤをつぶして⇒跳ねさせて…」というトレーニングをするなら最良のタイヤやと思うね。

カ:前に使った時はもっと跳ばない感じだったので、改めて使ってみて「アレ、こんなに跳ねたかな?こんなに止まりやすかったかな」ってちょっとびっくりしてます。

岩:タイヤの感覚って、フレームによって変わるからなぁ。フレームに合わせたベストな空気圧のセッティングが必要になると思うね、このタイヤ。「ベストな空気圧」っていう事についてシビアに考える良い機会にもなるし、タイヤについてじっくり考えたいライダーさんにはお薦めのタイヤやと思う。

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MAXXIS - CREEPY CRAWLER
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寺:MAXXISって、こんなタイヤだったんですか?思ってたのと全然違う…。

岩:一希達の世代が10年前くらいに「MAXXISなんて使えねぇ」みたいな事を言ってたもんで不当に評価が低いけどな。グリップは抜群に良いし、安定感とは違う「接地感」っていうの、感じるやろ? 自然地形でも人工物の上でも断然安心できると思うねんな。

カ:確かに。そう言われると「接地感」っていう感買は確かにあって、今回の4本の中ではズバ抜けてると思います。
グリップも良いと思います。

寺:独特の接地間は確かにあります。大きく飛んだ後の着地も安定感がある。
ただ、コシが無いというか、腰砕けな感じがあるかなぁ。不安定な所に着地した時にタイヤがヨレる。

カ:確かにヨレるけど、タイヤ全体がバランス良くヨレてる感覚がありますよ。それが粘りにつながってるし、グリップの良さに繋がってると思います。

寺:確かにグリップはそこそこ良いかな。でも、跳ねが弱いです。

岩:そうか?一希が乗ってるのを横から見てるとしっかり跳ねてる様に見えるけどな?

寺:う〜ん、跳ねるけど、空中で足を引っ張られる重量感があります。

岩:確かに他のタイヤより重量はあるし、反応は少し遅いかな。大きく跳べるライダーさんなら、跳ね具合もちょっと物足りないのは確かやろうな。

カ:初速は遅いですね、「ボヨン」って跳ねる感じです。でも、初心者〜初級者さんとかオジサンライダーの皆さんには良いんじゃないですかね?大きく跳ぶ時以外は良い事ばっかりのタイヤだと思いますよ。「まだ大きく跳べない」という段階なら速い跳ねは使いこなせないし。

岩:このタイヤだけが持ってる「接地感」は、そのまま安定感につながるからな。もっと評価されて良いと思ってる。

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JITSIE - REVERZ
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岩:最初は「何じゃこりゃ?」と思ったけど…。
やっとわかった。すごいな、このタイヤ。

寺:何もしたら駄目ですよ。何も考えずに「うりゃあ!」って飛ぶだけ。

岩:確かに、プッシュすると全く着いてこないし、跳ねてる感覚が全くない。プッシュを入れずに跳んだら勝手にタイヤが跳ねる。
新感覚のタイヤやな。「しっかりプッシュを入れて、タイヤを意図的につぶして跳ぶ!」っていうスタイルを貫きたいライダーさんとは相性最悪やと思うけど。

カ:大きく飛んだ時でも、跳ねてる感覚はわかりにくいですね。知らないうちに勝手に跳ねてる。
空気圧低めにしててもしっかり跳ねて、速い動きに着いてくる。不思議。

岩:「アナタはアナタで勝手にやってなさいよ。私は勝手に自分の仕事しとくから」とか言いながら、常に良い仕事してくれる感覚やね。独特。

寺:跳ね方もちょっと独特で、上に飛びたがる気がします。前に跳ぶ時も上に飛びたがるから、それをちょっと修正してやる必要はあるかな。
転がりがゴツゴツするのがちょっと気になる。

岩:極端にブロックが少ないもんなぁ。まぁ、ちょっとすり減ったら転がりはスムーズになると思うけどな。
ブロックパターンのおかげで前後のグリップはそこそこ良いけど、サイドがちょっとなぁ。

寺:サイドのグリップはつかみにくいですね。限界も低い。

岩:グリップ軽視⇒その分軽量、低圧で乗れる、考えなくてもタイヤが勝手にハネるっていうのは、つくづく現代のUCI競技向けのタイヤって気がする。
それにしても、プッシュが必要ないタイヤってのはなぁ…。技術が育たん気がするが…。

カ:でも、このタイヤをはき続ける限りその技術は必要ないわけですよね。その分体を動かす事に集中できる。
 「道具に頼ってでもとにかく飛距離を稼ぎたい」と思うなら最高のタイヤだと思いますよ。

続いてフロントタイヤ
その前に…。

岩:フロントタイヤって、グリップ以外は何を評価したら良いの?

寺:突き出しの時の跳ね具合じゃないっすか?

岩:一希のテクニックは独特やからなぁ。ズルしてるやろ?ヒョイっとブレーキで力を逃がして。

寺:だからその、逃がしたタイミングでパーンと跳ぶ様に空気圧調整してます。

岩:そんなマニアックな感覚、一般人にわかるかぃ!
だいたい、現代のタイヤって薄すぎるから空気圧高めになるし、粘りも何もあったもんじゃない。空気圧高めにするから突き出しじゃ勝手にある程度跳ねるし…。26inくらいにバリ―エーションが多かったり、前輪をぶつけるテクニックを多用するならもう少し違った話が出来るのにな。

寺:え、20インチも物によって全然違いますよ。限界の高さにダニパラして、こうバイクを押し込んだ時のグイっと感が。

岩:だから!そんなマニアックな感覚、一般人にわかるかぃ?



という事で、比較的シンプルな比較になってます。
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MONTY - Pro Race
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寺:グリップ感があるけどコシが弱い。
カ:グリップ良し。安定感よし。
岩:グリップ良し。滑りだす感覚もわかりやすい。
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MAXXIS - CREEPY CRAWLER
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寺: ゴムのグリップは良いけど、ブロックが邪魔してる感じ。ブロックを切り取って間引けば良いタイヤになるかも。
カ:グリップ良し。リアタイヤと一緒で接地間がある。安心。
岩:グリップと接地間のおかげで安定。空気圧を少し低めにできる唯一のタイヤ。子供達や女性で20inをリアタイヤに使うならこのタイヤ以外はあり得ないと思う。ブロック間引く作戦は賛成。
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OBR - GEKOK
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カ:サイドのグリップが甘い。ちょっとネバろうとしてくれるけど、ブレにもつながる。暴れる感覚もあって少し不安定。
岩:グリップが頼りない。特に前輪が下がった体制で滑った時にどうにかできる技術が無いので不安。
寺:コシが強い!このタイヤが良い?

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まとめ
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岩:個人的に使うんならどのタイヤが良い?

寺:前後ともOBR。攻める為の性能重視。

岩:フロントタイヤのコシの話がイマイチわからんけど…。つまり大きく飛んで前輪を刺した時の安定感とか、そこからの反発具合の話やな。カルロスは?

カ:リアはOBRの跳ね方が好き。フロントはMONTY。今回乗ったECHOと同じ位にバイクの取り回しが軽ければフロントはMAXXISが良い。
気楽に乗れるセッティング重視。

岩:今回乗ったMONTYのフレームに使うなら間違い無く前後MONTY。素直なので、「何が良くて飛べた/何が悪くて跳べなかった」という感覚が一番わかりやすい。上達する為のわかりやすさ重視。
とか言いつつ、次に乗る時にオレがJITSIE使ってたら「アイツ、逃げたな」と思ってくれ。

寺・カ:(笑)


以上、2016年5月現在のタイヤテストでした。
タイヤの特性は3人とも感じ方がだいたい共通。それでも、評価するポイントは好みによって大きく異なります。また、使うフレームによっては3人とも「これがベスト」と感じるタイヤは異なると思います。

あくまでも参考までに。