2010/4/23

注)20inに特化した話です。26inはこの限りではありません。


  26inより少し遅れて流行りだした20inのアップBBも、現在では主流と言えるくらい普及してきました。
ただでさえ26inに比べてピーキーな20inに、比率で言えば26inよりさらに強烈にBBを持ち上げて、さらに後ろ周りも短くするもんだから、そりゃあもう取り回しは軽いし、前輪は持ち上がりやすいし、異次元の感覚であることは間違い無いです。
上級者さんに絞って言えば、ダニエルで前輪から刺しに行くとか、ダニパラ=前輪を持ち上げたダニエル状態からの上方向へのジャンプで、身体の動く範囲が広い&大きいというのも大きなメリットです。

 初心者さんに限って言えば、前輪がとにかくパカパカと持ち上がるのは楽しいし、ちょっと練習すればダニエルっぽい動きもすぐに出来るので、乗っていて気分が良いですね。
でも、簡単に色々出来る=上達が早いという事ではありません。アップBB過ぎるフレームのデメリットをいくつか挙げてみましょう。

●前傾姿勢
  BBが高くなると、どうしても前傾姿勢が強くなります。いかなる状況でも脱力することが出来るライダーさんなら、前傾姿勢が強くても「なんかシンドイなぁ…」と感じる程度なのですが、『これからスタンディングを覚える』というライダーさんにとっては前傾姿勢は大問題。
誰だって、最初のうちはどうしても『ハンドルをこじって』バランスをとろうとしてしまいます。スタンディングの基本は前足に体重を預けて楽に立つ事なのに、前傾姿勢ではどうしてもハンドルに乗っかってしまいがち。体重をかけた状態でハンドルをコジるものだから、バランスは崩れるし、立て直そうとして力は入るし、収集がつかなくなってしまいます。
「あぁ何だ、たったそれだけ?スタンディング出来れば後は問題無いんでしょ?」と言ってしまえばその通り。でも、最初に染み付いたクセって、後からなかなか取れなかったりします。

その他、バイクと身体の重心位置が…という話もありますが、マニアック過ぎるので止めときましょう。
初心者さんに適した乗車姿勢=バイクの上に自然に立った時に直立姿勢に近い状態を作るは、BB低めのオーソドックスなフレームに高めのハンドルポジションというのが適正だと思ってます。

●楽すぎるダニエル…
  ちょっと乗りなれてくると、『ダニエル』(=前輪を持ち上げた状態でピョンピョン)してみたい…と思うのはトライアルライダーの必然。今までは四苦八苦の練習の末に手に入れたテクニックを、いとも簡単に実現する魔法のフレーム、それがアップBB。
確かに、ジャックナイフしてから身体を後ろに引くと、それだけでも前輪がフワリと浮いて…、身体を立ち上げてピョンピョンすれば、あらフシギ…ダニエルっぽい事が簡単に出来てしまいます。
前輪を持ち上げた状態で、ブレーキをフルロックしてピョンピョン♪、ここまでは非常に快適なのですが、問題はこの先。
ペダルをこいで前に進もうとする時、オーソドックスなフレームに比べて3倍ほど唐突に前輪が持ち上がります。少しペダルをこいだら前輪が持ち上がりすぎて後ろに倒れる…。
オーソドックスなフレームであれば、前輪を下げる動作、その時の身体の位置、ペダルのこぎ方、ペダルをこぐ距離と身体が立ち上がるタイミングといった物がわかりやすいのですが、全てが短い時間で起こるアップBBでは微妙なコントロールを覚えるのは困難です。
また、オーソドックスなフレームでは、ダニエル状態で立っているだけでも肩や背中の筋肉を使うので、ダニエルで立てる様になった頃には、跳んだり・着地したり、に必要な筋肉もある程度身に着いています。
対してアップBBのフレームで楽に立つ事に甘えていると、必要な筋肉が追いついてこないため、着地で体勢が作れなくて数回ハネたら横方向に倒れる…という段階から抜け出すのに時間がかかったりします。
道具に頼った技術は本当の技術じゃない…という話の典型ですね。


●ウィリージャンプ
  これまたトライアルの必須項目、ウィリージャンプ。走りながら前輪を持ち上げて、前や上に大きくジャンプ↑というテクニックですね。
基本的な動作は『後ろ足でペダルをこぎならが前輪を持ち上げておいて、前足で強くペダルを踏み込みながら伸び上がる』となります。前輪を持ち上げておいて…の前輪の高さは地面から20〜30cmくらい。前輪を低く=バイクを出来るだけ立ち上げない状態にしておいて、伸び上がるのと同時にバイクを立ち上げる事で大きく跳ぶ力につなげる…というのが有効なウィリージャンプのやり方だと思ってます。
ところが強烈なアップBBのフレーム、前輪を中途半端な位置に保つという事が非常に困難です。。。オーソドックスなフレームであれば、前輪が持ち上がるスピードは最初から最後までほとんど一定なので、「あ、今前輪がこの位の位置」というのがわかりやすいのですが、強烈なアップBBの場合前輪が10cmくらい持ち上がると、そこからスパっと前輪が浮いて、最終的な位置=完全に前輪が持ち上がった状態になってしまいます。
一瞬の動きの中で、前輪の浮き具合を感じ取って絶妙なタイミングでジャンプ!!、それもバイクの立ち上がるスピードに見合った速さで…というのは、少々困難です。
このタイミングを計れないのであれば、前輪が10cmくらい浮いた所からバニーホップに近い動きでジャンプするか、バイクを完全に立ち上げた状態からダニエルっぽく飛ぶか?の2択。どちらにしても身体能力が必要です。
これを書いてる岩佐も基本的にバネが利かない体なので、強烈なアップBBのバイクではウィリージャンプが出来ません。何とかタイミングを合わせようとするけど、スピードに身体がついていかず…、仕方がないのでバニーホップっぽい動きをやってみるけど身体が動かず…、乗りにくいから乗らない…では仕事にならないので半泣き(〒_〒)状態で乗ってたら、いつもの26inに乗った時に身体の動きがよくなってたりしてます。

最近の若いライダーは身体のバネが良い子が多くて、彼らに言わせると「あぁ、全然問題無いっスよ。乗りやすくて良いっスね♪」という事になります。

「身体能力に自身あり」、もしくは「身体能力をアップ?やってやろうじゃないか」という意気込みのあるライダーさんでなければ、ウィリージャンプで挫折する事になると思います


以上、長くなってしまったので要点をまとめると…
●「とにかくバイクの挙動が軽ければ良い」もしくは 「バンバン飛べる」というライダーさんにはオススメできます。
● 初心者さん、「色んな技術を確実に身につけたい」というライダーさんにはオススメしません。
という事ですね。

   

  今時のフレーム。其の参 強烈なアップBBの20in