2013/01/12

 トライアルバイクは3種類。ホイールサイズの違いで20インチ/24インチ/26インチに分けられます。
結論から先に書いておくと、「初心者〜中級者さんは、出来るだけ大きなホイールのバイクに乗った方が、上達が早くて楽しい」です。
ただし、20インチでは上手くなれないとは言わないし、最初のバイク選びの段階で「どうしても20インチがカッコ良く見える」という事であれば、20インチを選んだ方が良いと思います。

気に入って選んだバイクと、妥協して選んだバイク。バイクへの愛着も、日々のライディングの喜びも、大きく違ってくると思うので。。。


以下、それぞれのホイールサイズの特徴・長所と短所について。
24インチは「ちょっとコンパクトな26インチ」という雰囲気ですので、「20インチと24/26の比較」というケースが多くなります。

軽 さ

 20インチは24/26インチのバイクに比べてフレームやフォークが短く、またホイールが小さい分軽量に仕上げる事が出来ます。単純に重量が軽くなるというのは20インチのメリット。
また、24/26インチに比べて全長がはるかに短いです。ホイールベースの長さは同じだったとしても、ホイールが小さい分、全体が短くなります。 この短さが振り回しの軽さにつながって、前輪や後輪を持ち上げる・横に振る・もしくはバイクをまるごと回転させるという、トライアルの動きのほとんどが軽く行えるというのも20インチのメリットですね。
24インチと26インチにも、取り回しの軽さに関しては明確な差があって、やっぱり何をするにも24インチの方が軽いと感じます。


ただ、軽ければ何でもカンでも良いのか?というのは別の話し。特に初心者さんにとっては軽いバイクはデメリットばかりが目立つので、軽さにこだわり過ぎるのは危険です。詳しくはバイクの重量のページにて。

また、「取り回しの軽さ」はフレームのジオメトリー(寸法)による所も大きいです。
『ECHO 24』など、強烈なアップBBでリア周りの短い24インチだと、20インチより取り回しが軽かったりもするので、「24/26インチは20インチより取り回しが重い」とは言い切れません。


ホイールが小さい事のメリット

 20インチは24/26インチに比べてホイールサイズが小さいため、足場の狭い場所でのライディングには高いアドバンテージを発揮します。
1mに満たない岩がゴロゴロと転がっている場所、凸凹が多い岩盤や沢等の自然地形など、24/26インチではタイヤがひっかかって走りにくい場所でも、20インチであればスイスイと走れたりします。

また、ホイールが小さい事でペダルからタイヤまでの距離が短いため、タイヤの感覚や、タイヤで踏んづけてる地面や障害物の感覚がわかりやすいというのも、20インチの大きなメリットですね。


ホイールが大きい事のメリット

 20インチ車のリアタイヤは、24/26に比べて2回りくらい太い物を使用します。
「太い分、グリップも良くて安定感も増すのか?」というと、単純にそうでもなくて、 最近の24/26インチのタイヤもかなり高性能なため、細い=グリップに劣るというわけではありません。
それでも、濡れた丸太とか、トゲトゲした岩場でのライディングにおいては、タイヤが太い事のメリットと安定感は確かに感じられます。

でも、ですね。
20インチのタイヤ、幅は確かに広いのですが、 円弧は24/26に比べて非常に小さくなってます。
中級者さん以上の話しになりますが、例えば岩や段差の角にタイヤを置いて、「つぶれたタイヤの反発を使う!」という状況では、20インチのタイヤはべストな場所から前後に1cmずれると、十分な反発が得られません。対して26インチだと、前後に1.5cm位ずれても、タイヤの反発はそれなりに返ってきます。
言ってみれば、「20インチのタイヤは横に広いけど、24/26は縦に広いく、体感する縦の広さは2倍以上」という感じです。

「タイヤの感覚を覚えて、つぶし方や反発の使い方を覚える」という段階のライダーさんであれば、24/26インチの許容幅は大きな練習の助けになると思います。

安定感

 自転車に限らず、モーターサイクルや車でも、「ホイールは大きければ安定する」「ホイールベースが長い方が安定する」と言うのが定説です。
タイヤの直径の違いによる安定感、これを比べると20インチより24/26インチが優れています。
例えば、こぶし大の石がゴロゴロしている斜面を下ろうとする時、26インチなら勢い任せでダ〜っと走りきってしまえる様な状況でも、20インチだといちいち小石にツッかえて進めない、ということがあります。
他にも色々な状況が考えられますが、車輪が大きいという事で得られる走破性や安定感のメリットは大きいと思います。


段差上り 1

 助走をつけて段差に上る=ステアケースというテクニックにおいては、ホイールが大きい方が何かと便利です。
特に初心者さんの場合、上がろうとする段差のカベに後輪をぶち当てて上る方法が一般的になります。この時、ホイールが小さいと壁にぶつかった時に勢いが消えてしまいますが、ホイールが大きければひっかからずにスルスルと上れる。
同様に、ホイールが大きい方が慣性=バイクが走り続けようとする力が大きいので、より段差に上りやすくなります。
自分の力で地面を踏み切って大きくジャンプ出来る様になれば、20インチも24/26インチも大きな差はないのですが、初心者・初級者さんにとっては24/26インチの方が確実に段差に上りやすいです。

段差(ステアケース)についてもう少し考えてみます。
26インチであれば、上ろうとする段差の壁にポコンと前輪をぶつける事で、1m程度の段差ならスルリと上れてしまいます。そりゃ、初心者さんがいきなり1mの段差に上れるわけでは無いですよ。 でも、脱力してバランスのコントロールが出来て、自分の好きなタイミングで狙った通りのアクションを起こせる(=中級者さん)様になれば、誰でも1mは上れます。
24インチも同様のテクニックが使えます。ただし、ホイールが小さい分、前輪を当てる位置や飛び上がるタイミングを狙うのに、26インチに比べて少し神経を使います。

20インチでは、同様のテクニックを使っても、せいぜい70cm程度しか上れません。
(キッズが20インチに乗る場合、大人が24インチに乗ってるのと感覚が似てるので例外です。ブラック団の面々は身長x1.5倍の高さの段差にガードかけて上ってましたからね…。今考えてもスゴイ事です。以下、大人に限った話しとして読んでやって下さい。)

20インチは全長が短いため前輪をぶつけてから、後輪が地面を離れるまでの時間が24/26に比べて非常に短いです。この一瞬のなかで、「身体の中にタメを作る」→「踏み切って伸び上がる」の動作を行なうのは非常に困難です。
上級者さんの中には、壁に前輪を当てて高い段差に上れるライダーさんもいますが、これが出来るライダーさんは前輪をぶつけなくても同じ高さの段差に上る技術と身体能力を確実に持ってます。

20インチで1mの段差に上ろうと思うと、テクニックに加えてある程度の身体能力が問われるので、初〜中級者さんにとってはホイールサイズが大きい方がステアケースが楽と言えます。

段差上り 2

 ※だんだんマニアックになってますので、読むのがしんどかったら飛ばして下さい。

  助走の無い段差上り…、いわゆるダニパラと呼ばれるテクニックにおいても、20インチと24/26インチには少々違いが出てきます。

トライアルではほとんどのアクションにおいて、外的なタメの動作=進みたい方向の反対方向に入力を行い、返ってくる反動や反発を利用します。

全長が短い20インチ、ライダーの入力から、反動が帰ってくるまでの時間が、24/26に比べて短いです。
高く跳ぼうとする時、「反動に合わせて跳ぶ」、この時の1瞬のタイミングを狙う技術、またクイックに体が動く身体能力が 問われます
対して、24/26インチだと、入力を行なってから反動が帰ってくるまでの間に少し余裕があるのでタイミングを狙いやすく、また跳び上がる動作自体も20インチに比べて少しゆっくり目です。
ベニート・ロスとジル・クスティリエの、タメから跳び上がるタイミング、身体の動きのスピードを比べればわかりやすいと思います。

20インチはよりクイックさが求められ、24/26インチは緩慢な動作を許容してくれる。と言えます。


また、特に24/26インチはハンドルバーが遠いという事も、縦や前に飛ぶ時には大きなメリットとなります。
近年の26インチを愛用しているトップライダーは、ハンドルバーを出来るだけ遠くセッティングして、身体の動くスペース(=マニューバスペース)を広く確保して、「腕の力で体を引張り、足の力だけでは作り出せない勢いをつけて高く・遠く跳ぶ」というテクニックを多用しています。

20インチはハンドルバーを遠くするにも限界があるので、24/26と同様のテクニックを使うのは困難。限られたスペースの中で、いかに身体のバネを使って跳ぶか?の勝負になります。
24/26だって、高さや距離を伸ばそうと思えば、最終的には筋肉勝負になるのですが、同じ身体能力でもって乗り比べるにしても、24/26インチの方が 跳ぶために使えるテクニックが多いと言えます





安全性

 20インチのバイクは、24/26インチに比べてはるかに小さいですよね。
ホイールが小さい、フロントフォークも短い、ということで、スタンドオーバーが低くなります。スタンドオーバーとは、地面からトップチューブまでの距離だと思ってください。つまりは、バイクをまたいで両足で地面に立った時に、股下からバイクまでの空間が大きい=バランスをくずしてコケた!なんて時にも足を着きやすいです。
26インチと比べると、やっぱり24インチは足着き性が良いと感じますし、20インチとなれば一段と足を着きやすく、何かあっても逃げやすいです。
トライアルを練習していく中で何度もコケると思うので、26インチでもコケ慣れてしまえば大きな問題では無いんですけどね 。それでも、小柄なライダーさんであれば20インチの方が安心して色んな事にチャレンジ出来るのは間違いないと思います。、


変 速

 最近では変速機=ディレイラーを取り付けられるフレームもめっきり少なくなりましたが…
20インチではありえない24/26インチのメリット、それが「変速出来る」という事だと思います。
20インチでも24/26インチでも、「コレが定番!」というギア比が存在します。ただ、練習する技の内容によっては、細かくギア比を変える方が確実に上達が早いという事があります。

例えば、ウィリージャンプを練習するなら、最初は重いギアで練習する方が足の運びがわかりやすいし、中級者さんが「自分の足で踏み切る」感覚をおぼえる時には、ギアを軽くした方が良い。
そういう細かな調整が手元で行えるというのは、24/26インチの大きなメリットであると考えます。

結 論

 20インチは自然地形では扱いやすい。でも、全般的に身体能力が問われる。小柄なライダーさんでも乗れる。
24/26インチは使えるテクニックが多い。安定するので、技術を身に着けるための練習がしやすい。
24インチと26インチは、共通のテクニックを使える位に似てるけど、取り回しの軽さでは24インチが優れているし、タイヤの許容幅や安定感において26インチの方が優れています。

どうも24/26インチばっかり持ち上げてる様な書き方ですが、公正に判断したら、20インチより24/26の方が考えられる長所の数が多いというだけです。
15年前までは、トライアル専用の26インチ車はほとんど存在しなかったし、当時のルールで「26インチはマウンテンバイクで無ければいけない」とされていた為、トライアル車としては20インチの方が圧倒的に優れていたのも事実。
特に自然地形を走る時、20インチで感じる「自分の足で歩いたり跳んだりしている様なリアルな感覚」が、24/26では薄いのも事実。

どちらの良さも理解した上で、現代のバイクとテクニックを比べたら…という話です。
極私的意見ですが、「トライアルは段差に上ってナンボ」と思っているので、初〜中級者さんにとっては、楽に高い段差に上れる24/26の方が乗ってて楽しいのではないかと思ってます。

最後に…

 個人的には26inばかり乗ってます。
長く26inに 乗ってきたので馴染みが有るというのも理由のひとつですが、身体が速く動かないので20インチに求められるクイックな動きが出来ないというのが一番の理由です。
加えて、タイヤを置く場所に神経を使わなくて済むので、楽しく乗るにも、何かを集中して練習するにも都合が良いと思ってます。
それでも、身体の動きを確認したり、新しい身体の動かし方を考える時には20インチを好んで使ってます。

 

   ホイールサイズについて?